材料の高機能化・高強度化

薄物・小型・複雑形状品の高精度レーザ焼入れに関する研究

強度や耐摩耗性を必要とする鋼製部品等については,一般に焼入れ処理が施されます.焼入れ処理の代表的手法として,炉焼入れや高周波焼入れがありますが,いずれの場合も処理時に変形が生じることが多く,その除去のための機械的な矯正や切削等の後加工が必要となることも少なくありません.さらには,このような後加工でも対応できず廃棄せざるを得ない場合もあります.

レーザ焼入れは,必要な箇所のみへの硬化処理が可能な部分焼入れ法であり,従来法と比べて変形を小さく抑えることができます.また,レーザ焼入れでは,レーザ照射された高温部から周囲の低温部への熱移動による自己冷却作用により急冷がなされるため,従来法では不可欠となる水や油などの冷却剤が不要で,環境にも優しい手法です.このようなレーザ焼入れは,近年のレーザ加工機の高出力化,低価格化も相まって,産業界での利用が拡大しています.一方でレーザ焼入れであっても,薄い部品などでは変形が無視できなくなります.

本研究分野では,レーザ焼入れ時の材料の変形メカニズムの解明,変形を低減するための技術開発等,レーザ焼入れの利用拡大のためのさらなる高度化技術の開発・研究を行っています.

レーザ焼入れの様子
焼入れメカニズム

材料の評価試験・非破壊検査

繰返し球圧子斜め押込み試験による硬質材料の耐摩耗性評価に関する研究

近年,切削工具,機械構成要素等をより過酷な条件で使用するために,硬質のセラミックス薄膜をコーティングすることで表面強度や耐摩耗性を向上させ,長寿命化をはかる表面処理技術が広く普及しています.

本研究分野では,セラミックス薄膜などの硬質材料の摩擦摩耗特性等を評価できる繰返し球圧子押込み試験に関する研究を行っています.本試験では,静荷重を負荷する従来の球圧子押込み試験に比べ,より小さな荷重を繰返し負荷することによって,基材が異なる場合でも,その硬さの影響を受けず,薄膜のもつ本来の特性を評価することができます.また,試験領域が極めて小さいため,一つの試験片で多くの試験を行うことも可能です.

試験機と治具
摩耗の様子

超音波加振赤外線サーモグラフィ法(Sonic-IR)による非破壊検査技術の開発

超音波加振赤外線サーモグラフィ法(以下,Sonic-IR法)は,超音波振動によりき裂面等の欠陥界面の接触部で摩擦発熱を生じさせ,それによる温度変化を赤外線カメラで観察して欠陥を検出する検査法です.Sonic-IR法は,欠陥部での擦れ合わせを利用するため,従来の非破壊検査法が苦手とする ”閉口欠陥”の検出を得意とします.また,面検査が可能であるため広範囲を短時間で試験を行うことができ,検査対象によっては内部欠陥の検出も可能であり,現在様々な分野での適用が期待されています.

本研究分野では,Sonic-IR法の高度化や適用範囲の拡大を目指した研究を行っています.また,非破壊検査としてだけではなく,スポット溶接等の接合部材の強度評価への適用にも取り組んでいます.

Sonic-IR法の概要
試験結果の例(温度画像)

温度ギャップ赤外線サーモグラフィ法によるき裂の検出・形状評価

鋼橋などのインフラ構造物では,疲労き裂を早期に検出し,き裂の寸法・形状を定量的に評価することが重要となります.本研究分野で新たに開発した温度ギャップ赤外線サーモグラフィ法(以下,温度ギャップ法)は,き裂部の断熱効果による温度変化を赤外線カメラによって検出することで,き裂を遠隔から非接触で検出できる検査法であり,一部の道路橋の定期点検に採用されるなど,近年注目されています.

本研究分野では,本手法のさらなる高度化を目指し,現在では,温度ギャップ法によりき裂の内部形状やその寸法を定量的に評価する手法について研究しています.

鋼橋での温度ギャップ法の適用事例

滋賀県立大学工学部 機械システム工学科

材料力学分野

〒522-8533 滋賀県彦根市八坂町2500

Laboratory of Mechanics of Materials

Department of Mechanical Systems Engineering
The University of Shiga Prefecture

2500, Hassaka-cho, Hikone-City, Shiga 522-8533 Japan

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